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年金の本当のおはなし
支給開始年齢引き上げに関する問題点(1)
小宮山厚労大臣は、検討するといっていた年金に関する改変案を、今国会には提出しないと決めたそうですが、今国会に提出しないだけで、また出してくる可能性は非常に高いと思っています。今回、厚労省がこの話を出してきたのは、いつかは法案を通すための第1段階と考えるのが妥当なように思っています。
しかし、この支給開始年齢引き上げは、絶対にさせてはいけないことですので、何が悪いのかについて、3回に分けて述べておきたいと思います。ご覧になられました皆様には、問題点について、よくお考えいただければ?と思います。

今回の支給開始年齢引き上げの検討内容は、こちら↓を御参照下さい。
「支給開始年齢について」(資料)

尚、先送りを決めた後に、問題の審議会の議事録がupされました。
2011年10月11日 「第4回社会保障審議会年金部会議事録」

全部読むのはかなり苦行ですが、最初から最後まで、いかにすれば支給開始年齢を引き上げることができるか?について議論がされています。
厚労省の考えがわかると思いますので、御一読いただければ?と思います。

さて、今回の審議に関して簡単に言えば、年金の支給開始年齢を65歳と言っていたものを、68歳又は70歳支給開始にしよう、という話です。
問題点は後述いたしますが、厚労省の主張としては、今のままでは年金原資が無くなるので、年金の支払いを少しでも減らしたいというところから出ているお話です。
上記の資料では、その方法に3種類を提示していますが(21ページ目)、このうち?、?が65歳より後へ支給開始年齢を遅らせようというもので、皆様が問題視されているものです。しかし?のスケジュールの前倒しも、元々3年ごとにしていたのは不利益となる人が発生しないように考えて組まれていたスケジュールですので、決して良いわけではありません。
尚、68歳か70歳かというのはここでは大きな問題ではなく、可能であれば70歳にしたいという考えが透けて見えます。

まず過去の経緯についてですが、現在、公的年金は基礎年金(国民年金)と厚生年金を合算して支払われています。どこかに勤務をされ、お給料から厚生年金保険料として天引きされている方も、その厚生年金保険料には国民年金の保険料が含まれています。
元々、厚生年金は60歳支給開始、国民年金は65歳支給開始だったのですが、昭和60年の改正で基礎年金を設置し、厚生年金と国民年金を一本化したのに伴い、厚生年金の支給開始年齢を国民年金に合わせる事にしました。
そのため、まずは60歳から65歳の厚生年金のうち、基礎年金に該当する部分(定額部分)の支給開始年齢を25年かけて順次引き上げ、現在は64歳支給開始になっています。
そして、今後、厚生年金該当部分(報酬比例部分)を同じ年数を掛けて65歳へ引き上げることになっています(資料の6ページまではこの件について説明しています)。つまり、現時点では、まだ60歳から年金の一部分は支給されています。
なぜ、たった5年の支給開始年齢の引き上げにこれだけの時間をかける必要があるかというと、間に挟まって不利益となる人を発生させないためです。ですので、資料にありました?の引き上げスケジュールの前倒しは65歳以降へ引き上げることはしないとしても、決して好ましいことではありません。もし、この前倒ししたスケジュールで問題ないのであれば、昭和60年改正の時に、すでに早いスケジュールで設定していたはずです。支給対象となる方々に変わりはない以上、昭和60年当時と今とでは切迫度に違いはありません。見た目にマシに見えるからといって、決して良い選択肢ではありません。

非常に巧妙なのは、資料の最初の部分でこの説明をしているために、多くのマスコミでは、現在検討が始まった件も厚生年金に関するものと報道されていましたが、今回の検討は厚生年金だけでなく、基礎年金(国民年金)も対象となっています(21ページ目?)。
今回の検討では、今までのような、まずは一部分のみの引き上げを行い一定の収入は確保しつつ社会全体の整備を行っていくという考えは全くなく、いきなり全額を支払わないという形をとり、社会全体の対応は考えない年金制度内だけの勝手な検討となっています。
また、基礎年金も対象となっていますので、当然に国民年金加入者(自営業の方や専業主婦)も年金支給開始年齢引き上げの対象となっています。また、勤務しておらず厚生年金に加入していなかった時期(学生や転職の間等)の国民年金についても同様です。しかし、この資料ではその点については、まるで誤魔化すか隠すかのような表現となっています。
このような大きな改変を行うのであれば、全国民が対象となる改変であることを、もっと告知しなければなりません。もしこのまま押し進めれば、国は国民に対して詐欺を行うのも同然と言えます。許しがたいことです。

具体的な問題点については、次に書きます。

(2011.11.2)


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