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年金の本当のおはなし
社会保障と税の一体改革素案骨子(社会保障部分)について(1)
まだ素案骨子の段階ですが、社会保障と税の一体改革の年金に関する部分について簡単に述べたいと思います。
(「社会保障・税一体改革素案骨子(社会保障部分)」の原文はこちら
素案の「社会保障部分」には、年金以外にも子育て支援、医療・介護サービス保障、貧困・格差対策、雇用関連、財源についてなど、所謂社会保障に関する多岐に亘った問題が書かれていますが、ここでは他の部分は言及いたしません。しかし、重要な問題ですので、是非全体に関して御興味を持っていただきたいと思います。

「4.年金の部分」については、全体的に、今まで出てきているお話をまとめなおした内容といえます。
まず民主党がマニフェストに掲げていた年金制度改革を述べていますが、これは今すぐの事ではなく将来の姿として捉えられているようです。実際、今すぐこの形に変更するのは難しいでしょう。この改革案には数々の問題点があり、現状のままではとてもではありませんが、適用することはできません。
この問題点については、項を改めてまた述べたいと思います。


直近の問題としては「? 現?制度の改善」の方が重要でしょう。

(1)基礎年?国庫負担2分の1の恒久化
現在、基礎年金(国民年金)の年金額の2分の1は国庫、つまり税金から支払われています。現在の年金額が今の水準を維持できているのは、この国庫負担があるからに他なりません。もし税金投入がなければ、年金額はもっと少ないものとなります。
一つ、単純な計算をしてみましょう。現役時代が40年(20歳〜60歳)、老後の年金受給時代が20年(65歳〜85歳)あったとします。もし、老後の20年の間に毎月6万円受け取りたいと思えば、現役時代の40年の間に毎月3万円ずつ支払わなければ収支が合いません。簡単な計算です。今の給付額は年金積立金の運用益から出ているわけではありません。保険料の他に税金の投入があるからこそ維持できているのです。
(この事実は、現状の年金制度をきちんと理解できていない方々(マスコミや経済学者)が間違えて伝えているので、勘違いされている方も多いと思いますが、年金制度の多くの部分の誤解の元となっています。これについては、別途述べてまいります。)

この国庫負担分は以前は3分の1でしたが、現在は2分の1となっています。この2分の1負担を維持するために、先般の平成24年度予算案では「年金交付国債」が計上されています。
マスコミなどは借金の前借りなどと叩いていましたが、現在の年金給付額を維持したいのであれば、やむを得ない措置であると言わざるを得ません。これを好ましくないと断じるのであれば、年金額はもっと減額しなければなりません。現在すでに年金を受給している方々には既得権の維持がありますから、そのツケは今40歳代以下の若い方々に回ってくるでしょう。
結局、多い額を受け取りたいのなら、多い額の負担は当然に必要なのです。税金で対応するのは、若い方々への負担を減らすことともなります。何でも叩けば良いということではありません。

そして、平成24年度の予算では「年金交付国債」という一時しのぎで対処されましたが、恒常的に国庫が2分の1負担をするのであれば、消費税の導入はやむを得ないこととなるでしょう。埋蔵金などというものは一時金でしかありません。しかし年金は今後も永久にずっと支給し続けなければならないのです。ただし、この場合の消費税増税は、明確に年金原資として使われなければなりません。お金には色がついていないからと他の使い方をするのであれば、それは絶対に阻止しなければなりません。
消費税の増税は確かに大きな負担となります。しかし、若い世代の方々だけに負担を強いる事を避けるためにも、何がなんでも反対!とするのが正しいのかどうかは考えなければなりません。また、それと同時に、消費税で賄う分、保険料の減額も検討されるべきと思います。


(2)最低保障機能の強化
これもすでに話が出ていた内容となっています。
このうち、「? 低所得者への加算」は、マスコミではあまり取り上げられていませんでしたので、ご存じない方も多いかもしれません。これは、年金額が低い方について、年金額の加算をすることによって老後の生活を守ろうというものです。
しかし、この骨子にも書かれていますが、この加算を行うことによって保険料の納付をしない方が増える可能性もあり、セーフティネットの観点からは良いかもしれませんが、年金制度としては歪みを生じさせ、不公平感に繋がるだけの可能性も高いと思われます。実際、保険料を納めずに生活保護費を受けた方が得だと考える方も少なからずいらっしゃいます(それは考え方として間違えていますし、生活保護費の受給は確約されたものではありませんので、非常に危険な考え方です)。すでにカラ期間などによって、本来年金を受給できない方にも年金を支給しているという現実もあります。
私個人の意見で言えば、そのような加算をするよりもは、正しく保険料を納めていただき、正しく年金を受給していただく方策を考えるべきではないのか?と思います。

まして、「? 障害基礎年金等への加算」については、全く意味がわかりません。障害基礎年金も遺族基礎年金も、支給が決定すれば老齢基礎年金の満額以上の額を受け取ることができます。この骨子を作った方は、根本的に年金制度を全く理解していないのでしょう。

「? 受給資格期間の短縮」については、以前から取り沙汰されている事ですので、多くの方も同様の事を御考えではないかと思います。私個人も25年は長いのかなとは思いますが、この25年の縛りが保険料納付の理由付になっている以上は、安易に短縮もできないのではないかとも思います。
ただし、保険料の代わりとして消費税を導入するのであれば、この期間は無くても良なるようには思います。


項目が沢山ありますので、ページを分けます。


(2011.12.28)




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