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年金の本当のおはなし
「低所得者への加算について」について
1月6日に提示された「社会保障・税一体改革素案」の補足説明がいくつか発表されました。
このうち、まずは「低所得者への加算について」からお話したいと思います。(順次、解説を述べていきます)
「低所得者への加算について」の原本はこちらをご覧ください

この加算は、保険料をあまり掛けていなかった結果、年金額が少ない人にほぼ一律16,000円の加算をする、というものです。一部、年収65万円(月収約54,000円)以上84万円(月収7万円)未満の方には、16,000円ではなく月収7万円との差額を支給するということのようです。

この案は、はっきり言って、民主党が掲げている年金改革案に出てくる「最低保障7万円」へ向けての既成事実化としか思えません。もちろん、この加算では、将来導入予定の民主党案のように全ての方に7万円の保障をしているわけではありませんが、そのため以外にこの加算の意味があるとはとても思えない内容です。もしあるとすれば、消費税増税の不満の矛先を鈍らせるためのものでしょう。

現在、国民年金にのみ加入されている方で40年間保険料を納め続けて満額支給となっている方の年金額は月額で約63,000円です。つまり国民年金のみ加入の方については、その差額を支給することとなります。しかし一方で厚生年金にも加入されている方には、40年間の加入がなかったとしても元々これ以上の年金額を受給される事となりますので、この加算は行われない事となります。この案では、すでにここで不公平が生じてしまっています。

この資料の中では、繰り返し「インセンティブへの影響」を懸念するような文言が出てきます。これは、加算があると知ると保険料を掛けなくなるのではないか?という懸念です。ある意味、非常に国民をバカにした話だとも言えますが、もし本当にそれを気にするのであれば、一番良い方法は制度を歪ませることではなく、制度を正しく説明し、皆様に御納得をいただく事です。
保険料を支払われない事を心配するのであれば、このような制度の歪みを作ることよりも、どうすれば低年金・無年金の方を生じさせないか、もっと言えば、どうすれば全ての国民の皆様に気持ち良く保険料をお支払いただく事ができるようになるのか?をこそ考えるべきでしょう。昔の厚生年金加入者の被扶養配偶者のように、制度として任意加入であったために加入されていらっしゃらず年金額が少ない、という状況とは意味が全く違います(これに対応しているのが「振替加算」です)。
このような制度の歪みは、必ず後々の問題の種となります。それは現時点の年金制度で、すでに明確になっていることです。にも関わらず、また説明のつかない歪みを作出することの意味が理解できません。
このような保険料を掛けていなかった人を優遇するような制度など、どのような小手先の調整しようと、全ての国民の理解を得ることなど絶対にできません。特に最近の傾向としては、不公平に対して敏感に反応される方が増えています。年金は保険です。掛けた保険料に見合った年金額が支給されるようにすることこそ、重要なのではないでしょうか?「福祉」の名の元に、このような不公平な制度を作る事は、マイナスにこそなれ、プラスになることなどありえないのです。もしどうしても低所得者に支援が必要であるのなら、年金制度とは別に作るべきです。またそれは、単純な「お金の支給」ではない形であるべきです。

そして、この加算のためには0.6兆円の予算が必要だとしています。今、消費税の増税を少しでも少なくしようと考えるべき時に、何故このような無駄遣いをしようとするのでしょうか?「0.6」と書けば少ない額かのように錯覚するかもしれませんが、これは6000億円という大きな額です。本当に必要な制度であるのか、正しく検討されるべきです。


意味がわからないと言っておりました障害基礎年金・遺族基礎年金への加算については、これらの年金は支給するとなれば老齢基礎年金と同額以上の支給となり、今回の加算対象としている額を超える場合も多いのですが、やはり、それが理解できていないようです。
というのは、1級の障害基礎年金は満額の老齢基礎年金の1.25倍の年金額になりますので、この時点で84万円を超えるわけですが、この方々には1.25倍の加算をする、と書かれているのです。年金制度を全く理解できていないとしか思えません。
もちろん、障害基礎年金を受給されている方は少しでも額が増えた方が良いでしょうが、多くの障害基礎年金は40年間の保険料支払いがないにもかかわらず40年間保険料を掛けたのと同じ扱いとして満額の年金が支給されます。そのような状況の中でこのような加算をすることは、結果的に年金を受給される方とそうでない方との間に対立関係を生じさせかねません。第3号被保険者(被扶養配偶者)と勤務されている女性(第2号被保険者)の間に生じてしまった対立関係と同じような関係を増加させたいのでしょうか?しかも、障害というすでに大きなリスクを負っている方々に対するものです。決して良い結果とはならないでしょう。

遺族基礎年金についても同様の事が言えます。多くの場合、遺族基礎年金は残された妻に子の加算がつきますので、満額の老齢基礎年金より額が増えます。また、遺族基礎年金だけで子供と共に生活することは非常に難しいので、多くの場合はなんらかの収入を得ていらっしゃいます。つまり、84万円以上の収入がある方には加算しないのであれば、遺族基礎年金に関しては殆ど意味をなさない制度となります。

このような、歪みを生じさせるだけの制度変更はするべきではないと思います。


(2012.1.25)




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