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年金の本当のおはなし
「高所得者の年金額の調整について」について
二つ目の「高所得者の年金額の調整について」についてお話したいと思います。
「高所得者の年金額の調整について」の原本はこちらをご覧ください

これは所得の高い方の年金額を、本来の額からカットしようという調整です。年収1,000万円以上の方からカットをはじめ、年収1,500万円以上の方については老齢基礎年金の国庫負担部分つまり老齢基礎年金の半分(月額約32,000円)をカットするというものです。

元々年金は、なんらかの理由で収入が途絶えた時の生活費補てんのための保険ですので、そういう意味で言えば「年金を受給する年齢となった時でも十分生活できるだけの収入があるのであれば、年金を支給する必要はない」という論理も成り立たなくはないです。しかし、老後も高収入のある方は多くの場合現役時代も高収入でいらっしゃる事が多く、厚生年金加入者であればその分保険料が高くなっています。カットされるのが基礎年金の一部であるとしても多くの方々にはその区別はつかないでしょう。このような状況下で、このカットについて理解が得られるのかどうかが疑問です。「そのようなカットをされるのなら、その分の保険料を自分で運用した方が良いから支払わない」という意見は間違いなく出てくるでしょう。

そして、頑張って高い収入を得られるようになったら年金がカットされるというのは、それこそインセンティブとして国民の皆様がどのように思われるのか…と思います。「富める者が貧しい者に施しをする」という文化がない今、このような目に見えるデメリットはなかなか受け入れられにくいのではないでしょうか。
この説明では、老齢年金を受給している方で年収1,000万円以上の方は0.6%、年収1,500万円以上の方は0.2%しかいらっしゃらないので、多くの方には関係のない話だし別にいいでしょ?と言っているようにも見えます。しかし、収入が多いと損をするという発想が一般的になれば、ますます若い方々の希望を失わせる事とはならないでしょうか?そしてその風潮は、日本の経済そのものに悪い影響を与える事とはならないでしょうか?
低所得者の方に年金額を加算することについては、保険料納付に関するインセンティブについて繰り返し懸念が述べられているのに比べて、高所得者の方の年金額カットにはそういった議論が全くなされていないようなのが気になります。現に、現在施行されている在職老齢年金に関しては、就労意欲を削ぐものとしての問題点指摘されています。この案についても同様の問題が生じる可能性はあるのではないでしょうか。

また、対象となるのは「所得」とのことですので、調整するのは実際の所得があった翌年度の事となるのではないかと思いますが、退職等により所得が急変した場合の対応については全く記載されていないことも気になります。
この案を実際に施行するには、まだ検討が十分ではないように思います。


ただ上に述べたとおり、年金というものが所得補償のための保険である以上、所得が多い方のカットは、ある意味やむを得ないのかもしれません。もしそういうスタンスでこの案を施行するのであれば、「年金が所得補償の保険である」ということについて、国民の皆様にキチンと説明し、ご理解いただくことが必須でしょう。
するべきことをしないで結果だけを知らせていたのでは、ますます年金制度に対する不信感が増えていきます。マスコミは不信感の増幅には積極的ですが、正しい制度説明には消極的です。政府、厚生労働省として、正しい年金制度の認識への本格的な取り組みが必要なのではないかと思います。


(2012.1.27)




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