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年金の本当のおはなし
「制度運営上の改善事項について」について(1)
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しつこいですが、今20歳以上の方につきましては、50年も先のどうなるかも不明な年金改正案より、こちらの方が遥かに重要です。この内容におかしなところがないかどうかは、「あと50年で廃止となるのだから」ではなく、「あと50年間もこの制度が維持され、この制度の元で年金が支給される」という観点でチェックする必要があります。野党もマスコミの皆様も、本当に今すぐ議論しなければならないのはこちらの方であることを国民の皆様に知らしめていただきたいです。しかし、この内容については、相当の年金に関する知識を持って精査しなければならず、年金を知らない殆どの国会議員さんには太刀打ち不可能でしょうし、何より政局争いに利用することはできないでしょうから、国会議員全員がこの問題から逃げているとしか思えません。過去の年金制度が全てこの調子で国会承認され施行されているという事実を、国民の皆様はもっと真剣に考えるべきだと思います。尚、同様の事は年金以外の政策についても行われていると推測できます。

さて、内容についてですが、
その他の改正事項について
 (1)給付関係
   ○繰下げ支給の取扱いの見直し
   ○国民年金任意加入者の未納期間の合算対象期間への算入
   ○障害年金の額改定請求に係る待機期間の一部緩和
   ○渡航別支給の老齢厚生年金の支給開始に係る障害特例の取扱いの改善
   ○未支給年金の請求範囲の拡大
 (2)保険料関係
   ○免除期間に係る保険料の取扱いの改善
   ○国民年金保険料免除に係る遡及期間の見直し
   ○付加保険料の納付期間の延長
   ○前納制度の拡充
   ○DV被害者の免除制度の改善
 (3)その他
   ○悪質な未適用事業所等の公表
   ○所在不明高齢者に係る届出義務化
   ○年金給付の内払調整の対象範囲拡大
となっています。この他に参考資料等が添付されていますが、その中には日本年金機構からの要望もあります。
これらについて、順番にお話していきたいと思います。

・繰下げ支給の取扱いの見直し
現在、年金の支給開始年齢は65歳となっています。勘違いされている方も少なくないようですが、60歳から支給される年金は「特別支給の老齢厚生年金」であって、本来の年金ではありません。法律上、年金の支給開始年齢は昭和61年から65歳となっています。
この65歳から支給される年金を65歳以降最大70歳まで据え置いて、その分、額の多い年金を受給するという選択ができることになっています。しかし、この選択をした場合、支給申請をしなければ年金は支給されません。仮に70歳まで据え置くつもりでいたとしても、70歳になったからといって自動的に支給が開始されることはなく、自分で支給申請するまでは年金を受給できません。その事に気づかれず、70歳以降まで放置状態になっていらっしゃる方がいらっしゃいます。
このような方々が70歳以降に支給申請手続きをされた場合、支給申請された月の翌月分からしか受給できず、70歳まで遡って受給できないだけでなく、その間の年金額については70歳までの期間のように繰り下げによる増額もされないという状況になっています。仮に70歳6か月で支給申請をした場合、70歳以降の半年分の年金が無くなる形となり、申請した月の翌月から70歳まで繰り下げたという計算での年金額が支給されます。
今回の見直しは、この不都合を解消するためのもので、70歳以降に支給申請した場合、70歳になった月の翌月まで遡って支給する(遡り分は一括支給になると思われます)としたものです。
この見直し自体は正当なものだと思いますし、早く対処していただきたいと思いますが、該当される方の人数は総数の割合で言うとそんなに多くはありません。
尚、この措置については「過去に遡って適用する」という記載はありませんので、法施行後に該当される方のみのこととなる可能性が高いです。

・国民年金任意加入者の未納期間の合算対象期間への算入
現在、国民年金は、日本国内に居住される方で20歳以上60歳未満の方であれば、国籍に関わりなく全員加入し保険料を支払わなければならないことになっています。一方で、日本国籍がある方でも日本国内に居住されていない場合は国民年金に加入する義務はなく、ご希望される方については任意加入という形で国民年金に加入することができます。尚、日本国内の企業に勤務されて厚生年金に加入されている方が、身分はそのままで海外へ転勤等された場合は、そのまま厚生年金に加入することとなります。また、日本国外に居住されている場合は国民年金には任意加入せず、現地の年金(社会保障)制度に加入することも可能です。日本国内に居住しているかどうかは、通常は住民票で確認されますので、実態として日本国外に在住していらっしゃっても住民票が国内に残っている場合は、基本的には国内に居住しているものとして扱われます。
この日本国外に居住され任意加入をされた方について、保険料を支払っていない期間はカラ期間として保険料納付済み期間に加算する、というものです。
しかし、これはおかしな話ではないでしょうか?自らの意思で任意加入をされ保険料を納めると仰っているわけですから、日本国内に居住され保険料支払い義務がありながら保険料を納めていない人と同じ扱い(現在は同じ扱いです)でなければいけないのではないでしょうか?もし、日本国外在住による任意加入の方々の保険料未納期間をカラ期間扱いにするのであれば、国内居住で保険料未納期間もカラ期間の扱いにしなければ話が合いません。これでは、わざと日本国外在住にして任意加入し保険料を未納のまま放置する人が出てきてもおかしくはありません。また、任意加入は国外在住の場合以外に保険料納付期間が40年未満の方については、60歳以降65歳までの間に任意加入することによって、保険料納付済期間を25年にして年金受給ができるようにしたり年金額を増加させたりすることができるというパターンもあります。日本国外の任意加入の未納期間をカラ期間とするのであれば、この方々についても同じ扱いにしなければ話が合わない事になります。これでは、何のために25年の保険料納付済期間を設けているのか意味がわからなくなります。
このような不合理な制度は設けるべきではありません。


長くなりますので、ここで一旦切ります。


(2012.2.13)




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