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年金の本当のおはなし
消費税増税について
8月10日に消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法が成立いたしました。
この法律の正式名称は「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」と言います。非常に長い名称ですが、この名称に今回の消費税増税の本当の意味がキチンと述べられています。残念ながら、マスコミ報道では略して報道されていますので、この事実すらご存知のない国民の皆様は多いのではないでしょうか。
もちろん、私自身も消費税は安い方が良いに決まっていますし、今のこの景況の中で消費税を増税するのが正しい事がどうかには大きく疑問を持ってはいるのですが、「本当に」社会保障のためであれば、やむを得ない増税であるとしか言いようがありません。この部分を正しく広報(報道)しないまま、ただ税金が上がるということばかりを煽っているのでは、結果的に国民の本当の利益とはなりません。マスコミの皆様には視聴率や売り上げに捉われず、また感情に流される事なく、正しい報道を心掛けていただきたいと切に願います。

そもそも何故このような増税が必要となったか?という事をご説明いたします。尚、このような説明は、本来は厚生労働省が行うべきことだと思っています。
年金制度そのもののご説明はサイト内の他ページをご覧いただくとして、年金制度に賛成されようと反対されようと、現時点ではこの年金制度そのものを廃止することはできません。
まず一つ目の理由として、すでに保険料を支払った方々で年金を受け取る権利を持っていらっしゃる方々が沢山いらっしゃるということがあります。もし、今すぐ年金制度を廃止するなら、この方々全てに、平均寿命まで生きた場合の年金額相当の金額、それが無理なら最低でも支払った保険料分の金額を支払わなければ、納得を得る事は難しいでしょう。しかし、年金制度は世代間扶養の賦課方式を取っていますので、すでに支払われた保険料の殆どは年金として支払われてしまっていて、現金としては残っていません。今「年金積立金」としてある4兆円ほどのお金は、今は年金を受給している世代の方々が、過去に年金支給額より多い保険料を納付された時期に貯められた金額であって、現在徴収されている保険料から積み立てられているものではありません。
もし、今すぐ年金制度を廃止するのであれば、少なくとも集めた保険料分の金額を今すぐ捻出しなければならないこととなります。しかし、これにはたった4兆円では、ほんの一部にしかならないほどの多額のお金が必要となります。そんな金銭的余裕は、今の日本のどこにあるのでしょうか?現実問題として、今すぐ年金制度を廃止することは不可能です。尚、これは積立方式への移行についても同様の事が言えます。
そして、もっと根本的な話として、年金制度は、なんらかの理由で自ら収入を得る事ができなくなった場合(高齢・障害・死亡)の所得補償保険ですので、仮に上記の理由がクリアできたとしても、安易に廃止することはできません。もし、年金制度を廃止するのであれば、生活保護制度をもっと充実させなければならなくなりますが、生活保護費は100%税金から支出していますので、年金と同等かそれ以上に国民の負担が大きくなってしまいます。昔のような家族単位で高齢者や障害者の生活を守っていくか、全ての国民が自ら収入を得る事ができなくなった時点で死亡するかでなければ、なんらかの形での保障制度は不可欠となります。もし、これを民間の保険で賄おうとすれば、保険料は国が運営する年金の倍以上、おそらくは3倍近い金額となります。とてもではありませんが、支払える金額ではないでしょう。

さて、年金制度そのものを今すぐ廃止することが不可能であれば、制度の維持を考えなければなりません。すでに散々言われているとおり、年金を受け取る人口と保険料を支払う人口の比率が、「当面は」バランスが悪くなります。団塊の世代の方々が年金を受給する年代となられている現在、すでにその状況は始まっています。
一方で、散々行われてしまったネガティブキャンペーンのために、年金制度への不信感が高まってしまい、自分で保険料の納付をしなければならない国民年金では保険料を支払わない方が増えてしまいました。(他にも制度そのものの不備のために収支のバランスが悪くなっている点も少なくありませんが、これについては、他の項でご確認下さい。)
これらの状況を踏まえ、年金制度の維持のために、平成16年の制度改革で国民年金(基礎年金)の国庫負担の割合を増やすこととしました。元々、国民年金(基礎年金)の支給額の三分の一は国庫(税金)から支払われていました。しかし、平成16年(2004年)に国庫負担分を二分の一に引き上げる事と決めたのです。そして、これを実行に移されたのが平成21年(2009年)6月です。

国庫負担分を三分の一から二分の一に引き上げるということは、当然の事ながら、その分の財源がなければなりません。ところが、この財源が普通の税金の範囲(国庫)では、まったく不足していたのです。そのために、現時点では特別国債というワケのわからない国債で賄われています。国債というものは、要するに日本国の借金です。国債の購入者が誰であろうと、いずれは返済しなければならないお金です。
このような将来への借金を少しでも減らすために、消費税によってこの不足している年金原資分を補おうとしたのが、今回の「社会保障と税の一体改革」です。はっきり言って、この消費税の増税分だけでは、国債に代わる年金原資以外に使えるほどの金銭的余裕は生じません。仮に余裕ができたとしても、社会保障…つまり、今後高齢者が増大することによる医療費や介護費への補てんだけで全ての金額が無くなってしまい、他へ転用する余裕などはない事態となることが容易に想定できます。
確かに、東日本大震災による被害の復興は非常に重要な問題です。しかし、それに充てる事ができるほどの余裕は、この増税分だけでは望む事はできないでしょう。にもかかわらず、三党合意という形で、社会保障以外の使用目的を入れ込んでしまいました。これは重大な目的変更であるにも関わらず、「必要」の二文字で簡単に認められてしまいました。しかも、それは「政局」という一般国民とは関係のない事情によるものです。
このような政治家の暴走は絶対に許せるものではありませんし、マスコミの皆様にも、このことにこそ切り込んでいただきたいと思います。

もし、この消費税増税が無く、また増税しても社会保障以外の用途に使われれば、すでに発行されている国債以降も国債が発行され続けることとなります。この年金を支給するために発生した国債=借金を返済するのは、今の若い方々になる可能性が非常に高いです。少なくとも、今年金を受けている…つまり借金を食いつぶしている方々ではありません。若い方々は多くの高齢者を支えるための保険料だけでなく、過去に発生した国債の返済も迫られることとなるのです。であれば、消費税という形で、現在年金を受け取っている方々にも、その一部を負担していただいた方が、今の若い方々にとっては有利なのではないでしょうか?
まだ若い皆様には目先の出費だけでなく、このような「実際に起こりうるマイナス面」にもよく考えていただいて御判断いただきたいと思います。また、マスコミの皆様には、単に「消費税増税イヤ!」だけではない、本当の問題点をキチンと報道していただきたいと思います。


(2012.8.13)







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