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年金の本当のおはなし
新たな支給開始年齢引き上げ案に注意!
2014年5月11日にNHKの「日曜討論」にて田村厚生労働大臣が支給開始年齢を75歳まで引き上げる事についての検討をするとの考えを示したそうです。
「選択制で75歳程度まで」年金支給開始繰り下げ検討
(上記リンク先は、当該Webサイトの事情により削除・移転されることがあります)

またしても、支給開始年齢の引き上げに関する話が出てきました。しかも、今度は75歳という高齢です。
一応、「選択制」と言ってはいますが、そもそも基本的な支給開始年齢が70歳である前提となっている事がおかしいでしょう。まだ、支給開始年齢の引き上げが決まったわけではないですし、選挙等での国民の同意を得ているわけでもありません。勝手に、70歳支給開始ありきの話になっているのは異常と言って良いでしょう。
そしてこれは、基本的な支給開始年齢を75歳へ引き上げるための布石となります。
もし、75歳からの支給となると、何年間受給できるでしょうか?冷静に考えてみていただきたいです。

すでに何度も書いておりますが、寿命は延び続けるものではありません。現実に、平均寿命は低下してきています。
今、御存命の90歳以上の方々が亡くなられた時、平均寿命が大きく下がる可能性は高いです。おそらく、あと10年もすれば、平均寿命は70歳代に低下するでしょう。75歳になる日も容易に想定できます。
40年間保険料を掛け続けて、ほんのわずかの期間しか受け取れない設計となってしまいます。これこそ、年金制度の破綻です。
そんな事態になることは許してはなりません。

なぜ、年金制度が危ないと言われ出したのか、もう一度思い出していただきたいです。それは、団塊の世代をどう支えようか?という話だったはずです。
しかし、その世代の方々は、すでに年金を受給する年齢となられました。今更、受給開始年齢を引き上げても、年金制度維持のために一番重要な問題は回避できません。
今から支給開始年齢を引き上げたとしても、年金制度の維持には全く関係ないのです。

そして、今後、子供も減るかもしれませんが、高齢者も確実に減ります。すでに高齢者が減ってきているという報道がNHKでもなされています。
高齢者の方々はいつまでもいらっしゃるわけではありません。政府が言い続けているほど、将来の現役世代の負担が大きくなるわけではないのです。
2050年の人口分布予想など、何の根拠もない推測でしかありません。国民の皆様は、あの通りになると思いこまされているだけです。

支給開始年齢は、一度引き上げてしまったら、元に戻す事はできません。例えば、70歳まで待った方の次の年に生まれた方が69歳から貰える…ということになれば、当然に不満が生じます。それを解消するには、より高い年齢まで待っていただいた方に適切な補償をすることとなります。
しかし、そのための原資は、今の年金制度にはありません。実質、一度引き上げてしまったら、後になって失策だったとわかったとしても、もう元に戻す事はできないのです。
このような不可逆な改正は、年金のような長期間に亘る制度に取り入れてはいけないのです。年金制度は60年を超える期間を対象としています。その間にいろいろな変化が生じます。年金制度の改正は、その変化に対応できるような改正でなければならないのです。

そして、何より一番怖いのは、こういう話が出るたびに、若い方々が「将来年金なんか貰えないのに、保険料なんか納めたくない」と思われる事です。
どう考えても、数年しか受け取れない年金のために、40年も保険料を掛けるなどというバカげた事をしたいワケはないです。それは、考えるまでもなく当たり前の事です。
どんどん支給開始年齢が上がっていくのであれば、若い方々が保険料を納めなくなっても、それを責める事はできません。
我々が、様々な場所で「年金は必要である」「保険料は掛けなければならない」と説明していても、上からこんな話をされたのでは、全て水の泡です。厚生労働省は年金制度を崩壊させたいのでしょうか?

日本の年金制度は賦課方式です。今の若い方々が保険料を納めなければ、今の高齢者の方々の年金はありません。年金制度を維持したいのであれば、若い方々が保険料を納めたいと思える制度にしなければなりません。政府は、この当然の原理を全く考えていません。
年金は、支給するための制度であって、貯蓄するための制度ではありません。
政府も政治家も官僚も、この原則を全く忘れ去っています。


何度も繰り返しますが、絶対に支給開始年齢の引き上げはさせてはいけません。それは、今、現役世代である方々の大きな損失となります。こんな暴挙は絶対に許してはなりません。


(2014.5.11)







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