2月14日に提示されました社会保障審議会年金部会の資料のうち二つ目の「高所得者の年金額の調整について」についてお話したいと思います。
2月14日に提示されました「高所得者の年金額の調整について」の原本は
こちらをご覧ください
1月23日に提示されました「高所得者の年金額の調整について」の原本は
こちらをご覧ください
大変申し訳ありませんが、すでにご説明いたしました内容等につきましては、基本的に再掲いたしません。以前のご説明等は『
「高所得者の年金額の調整について」について』をご覧ください。
2月14日の「高所得者の年金額の調整について」は、「低所得者への加算について」とは違って、基本的に1月23日のものを掘り下げたような内容となっています。
まずは、この案の良し悪しはともかく、高所得者の年金が全額停止となるわけではありませんので、それは勘違いなさらないように御注意下さい。対象となっているのは、あくまでも基礎年金のうちの国庫負担、つまり税金から支給される部分についてのみです。掛けられました保険料に対応する年金については、今まで通り支給されます。もし、「高所得者は年金が全くなくなる!」というような記事があれば、それは完全に間違えた記事ですので、そのような記事は信用なさらないで下さい。
この資料では、1番目に「高所得」とはどの程度の収入の方を言うのか?について書かれています。
基本的には、国庫負担部分の全額を停止するのは年収1,500万円以上の方と設定しているようです。そして、一部停止をする方については年収1,000万円以上、850万円以上、700万円以上という案が出ています。ただ、これは決定されていることではなく、他の案も提示されています。
仮に年収1,000円万円以上からすこしずつ調整し、年収1,500万円以上については全額停止とした場合、その効果は450億円となっています。この案は低所得者への加算とセットで考えられているようですが、低所得者への加算で必要な額が6,000億円となっているのに対し、随分低い金額です。低所得者への加算のために高所得者への減額を行うのであれば、あまり適切ではないように思われますし、低所得者への加算は消費税の増額分から支給されることになっていますので、根本的に辻褄が合わない話となっています。。
そして何より、この「年収」をどのように把握するのか?という問題があります。今まで通り前年度の収入を基に計算するのであれば、本当は収入が落ちているにもかかわらず年金が減額される可能性があります。高齢者の年収の減額は退職による場合も多く、実態と合わない状況となる可能性は高いです。
2番目に、この措置は新しく年金を受給する方だけでなく、すでに年金を受給している方も対象にする可能性が書かれています。
過去の年金制度の変更では、既得権を守るという原則のもと、すでに年金の受給が確定している方の年金額を物価変動以外の理由で減額することはなかったのですが、昨今の世代間格差に対する問題意識に配慮しているようです。
しかし、年金制度において世代間格差は当初からあるもので、現在の受給者の皆様もその前の世代に比べれば低い額となっていますので、このような減額が正当なものかどうかの考察は必要ではないかと思います。世論の動きで制度がフラフラするのはあまり好ましい事ではありません。現行の年金制度も世論を配慮した結果、歪んだ制度となっています。十分な検討が必要でしょう。
3番目に、減額調整する額について書かれています。
これは上に書きましたとおり、基礎年金のうちの国庫負担部分のみです。平成24年現在価格で、月額約32,000円が上限となります。もし、保険料納付期間が短ければ、それに応じて少ない額となります。保険料として支払った部分の年金額については減額の対象とはされません。
この高所得者の年金額の調整も、何が目的なのかがよくわかりません。収入の多い人なら年金がなくても暮らせるだろう、という考えでいるなら、保険である年金の根本を揺るがす考え方です。消費税を上げる→所得の低い方の年金額を多めにする→その分、所得の多い額の年金額は減らす…というのは、政治の都合を国民に押しつけているようで、どうにもおかしな事のように感じます。そのような事をするくらいなら、今まで通りの支給として、消費税の増額幅を少しでも少なくした方が良いという考え方もあるでしょう。
このまま法案として通すことなく、これで本当に良いのかどうかを、もっと国民に問う必要があるのではないでしょうか?そのためにも、国会では政局争いなどしていないでマトモな議論を行い、マスコミも国民の利益のための報道をすべきだと思います。
(2012.2.20)
この記事に関連する記事があります。
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2月14日に提示された「低所得者への加算について」について
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